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■春景色 南野陽子さんのベストがリリースされたので当時のことなどを少々。 私が南野さんの曲の依頼を受けたのは、確か1985年だったと思います。当時、私がソニー系のアイドルで手掛 けていたのは松本典子さんと原田知世さんだったのですが、この2人に比べると、南野さんの当初の各種媒体 への露出はそれほど多くはなかった印象でした。事実、南野さんのデビュー・シングルはチャート・インしたもの の、それほどのヒット曲にはなっていなかったのです。 一方、この頃のソニー系アイドルの制作部はそれまでの大御所の職業作家ではなく、私のようなニュー・ミュー ジック上がりの新しい作家を積極的に登用していこうという気風があったのですね。で、私にも声がかかったの でしょう。 「春景色」はよく詞先(詞が先に出来ていてそれに曲をつけること)ですかと聞かれるのですが、曲先です(ちな みに私が南野さんに書いたほとんどの曲は曲先です)。音数が多い曲になったので、詞でストーリーが歌えた のでしょうね。ちなみにこの詞を担当した「イノ・ブランシュ」という人は文章の方の作家の人だったと記憶してい ます。この曲で出てくる「ジェラート」という言葉は南野さんのファースト・アルバムのタイトルになりました。 常々、思うのですが、歌というのは決して歌唱力だけではないのですね。歌う人のキャラやビジュアルや雰囲 気も含めてトータルで送り出されていくものだと思っているんですよ。そういう意味で「春景色」も「話しかけたか った」もまさにあの時代の南野さんのためにあった曲だったと思いますよ。 2003/7/16 |
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