■TEXT
■バブルの時代 かつてこの国にもバブルと言われる好景気な時代がありました。東京はまるで宝石箱をひっくりかえしたよう に活気があり、人々はこの恩恵を十分に享受していたのです。そういう私も末席かとは思いますが、そのような 中におりました。 当時、六本木などで食事をしたあとにちょっと話込んだりすると決まって午前の時間帯になってしまい、必ずタク シー帰りというパターンになりました。しかしながら、当時は平日でも終電過ぎのタクシー乗り場では長蛇の列 ができて、運悪くウイークエンドともなれば1,2時間並ぶのはあたりまえという状況だったのです。 そこで「白タク」が登場するわけです。 タクシー乗り場に並んでいるとどこからともなく、まず堅気とは思われない方が「あ〜横浜方面!横浜方面!! 」などと連呼されるわけです。だいたい分別ある人ならこういうものは利用しないのですが、私はとても2時間 も並んではいられないと思い、その方のあとについて行きました。 白タクというのはだいたい車の定員6人がそろわないと走り出しません。私が車に乗ったときはすでに何人か のお客さんが乗っておられました。そして、そこに漂うのは妙な空気です。ドライバーがパンチ系でなんとか バレンチノってでかく書いてあるジャージの上下みたいのを着ているのはまあいいとして、 乗っているサラリーマン風の方々には一様に緊張感が漂っているのです。 リーマンA「あ〜やっぱり乗るんじゃなかった〜この運ちゃん、完璧、あっち系の人だよな〜」 とか リーマンB「一人残ったらぼこぼこにされて、財布抜かれて、重石つけられて東京湾に沈められちゃうかも〜」 とか まあそういう心情が渦まいていて、みんな妙に礼儀正しかったりします。 そうこうしているうちに最後のお客さんが乗り込み、車は走り出しました。白タクはほとんどの場合、高速は使い ません。1人1人、順番に降ろしていくからです。小1時間ほどで、まず1人目のお客さんのうちに到着しまし た。確か日吉あたりだったはずです。ここでクライマックスの料金請求です。もちろんメーターなどはありません。 みんな固唾を飲んで聞き耳を立てています。 パンチドライバー「あ〜6000円!!」 端数などはありません。果たしてこの料金は適正価格なのでしょうか?割安ではないけど、たいして高くはない といったところだと思いますが、分かっていることは請求された金額は無条件で支払わなくてはならないという ことです。 4人目のお客さんが降りる頃にはすでに走り始めてから2時間は経過していたでしょうか。ここで一つの法則を 発見しました。お客さんが降りるときは決して自分の自宅のまん前ではなく「ここでいいです」という場所で車を 止めさせるのです。そりゃそうですよね、自宅がわれちゃうとなにかとコワイかと・・・。 最後の私の自宅のそばまで来るころには約2時間半経過、高速で普通に来れば1時間ほどの距離なのに、で す。 ドライバー「お客さん、時間かかったから15000円でいいや」 オレの心の叫び 「いいや」って、あの〜普通のタクシーだと12000円ぐらいなんですけど・・・ バブルの真最中のほのぼのとする話でございます。 2002/9/6 |
kishi masayuki on the web |