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May 17,2014

■日本の古典

 
庫の奥の方に眠っていた近松門左衛門と井原西鶴の本。取り出してみたのですが、百科事典並みの重量があり、寝る前に読むには筋力と忍耐を要します。

ひとつ驚いたことは溝口の映画「近松物語」の原作「大経師昔暦」が実話を元に書かれた作品で、おさんと茂兵衛の墓が実在することでした。また、この同じ事件を井原西鶴が題材にした(近松より30年早い)のが「好色五人女」の「巻三 中段に見る暦屋物語」で、これは「近松物語」とは色々と異なる部分があります。

西鶴の「中段に見る暦屋物語」では、「近松物語」のような使用人を囲おうとする大経師は出てきませんし、おさんと茂兵衛が恋仲になるきっかけも全然違う物語です。また、逃走してからも西鶴ではおさんと茂兵衛は心中を装い逃げ延びようとするなど結構したたかに描かれていますが、溝口の映画では当初は誤解によって図らずも逃走しなくてはならなくなり、舟上の茂兵衛の告白で初めておさんが愛されていたことに気づき、徐々にふたりの気持ちの濃度が等しくなるという物語です。このあたりの脚色や取り上げ方が溝口流の美学なのでしょう。

 

 
 
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