■TEXT

Mar 28,2015

■花・太陽・雨

 「花・太陽・雨」は1971年にリリースされたピッグのデビューシングルです。

昔、初めてこの曲を聴いた時に、近所のレコード店に飛び込んでシングルを買いました。白黒のジャケットデザインはとても洗練されたもので、このレコードを自分の物にした時に少しだけ大人になったような気がしたものです。

いつの時代にもその時代の流行歌とは少々はずれた曲が存在します。例えば、今でも歌い継がれる「ヨイトマケの歌」や「黒の舟歌」のような曲がそうですが、「花・太陽・雨」も流行歌の世界とは異質な香りを持つ曲でした。職業作家ならまずこういう曲をデビューには書かないであろうし、良い意味でも悪い意味でも等身大のメンバーがかもし出すリアリティやピュアさに心を打たれたのだと思います。GS時代からのファンの人たちにとってはこの振幅の広さにとまどったことは想像に難くありませんが、重いビートに乗った内省的な歌詞はGS時代の甘い世界感とは全く異質の、前のめりな迫力が確かにありました。

考えてみれば、ビートルズでさえデビューの時点では外部作家の曲やスタジオドラマーが用意されていたという日本のGS的ギミックがあったわけで、手っ取り早くヒットを出そうとする手法は日本でも海外でもあまり変わらなかったように思うのです。ただし、ビートルズのその話は1960年代初期のことで、日本では1970年代に入ってからようやく本物のバンドが生まれ始め、その中のひとつがピッグだったのでしょう。残念だったのは彼らがあまりにもGSのピックアップメンバーというパブリックイメージが強かったために正当な音楽的評価を受けなかったことでした。

ピッグは2年という短い活動期間に5枚のシングルをリリースしましたが、この「花・太陽・雨」がこのバンドの志しを一番色濃く表現した曲であったと感じます。


■■■■■■■■ kishi masayuki on the web


<<   
TEXT MENU   >>

HOME