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Dec 21,2016

■クリスマスソングと赤い鳥
 
 の時期、街に流れているクリスマスソング。先日もどこかの店へ行った時流れていたのが'Children Go Where I Send Thee'(Come and go with me)という曲。赤い鳥がこの曲をその昔カバーしていましたが、それは鬼気迫るという形容がぴったりくるほどうまかったです。この曲には色々なバージョンがあるようですが、赤い鳥はTravelers3のバージョンに近いです。途中、歌詞が数え歌の様になる部分はキリスト教系の歌である'A Soalin'や'Jane Jane'に似ています。

今ではカレッジフォークから派生したコーラス主体のグループはほとんど忘れられた感がありますが、赤い鳥はライブで演奏しても、どんだけ練習したんだよって突っ込みたくなるほど、5人の縦の譜割りがぴたりと合っていました。さらにこれも今では忘れられたスキルですが、歌やギターのピアノからフォルテまでのダイナミクスもシンクロナイズドスイミングのように見事に全員合っているのです。小田和正さんが今でもテレビ番組でボーカリストをたくさん集めてセーノで歌うという企画をやっていますが、あれはおそらく若き日の赤い鳥の完成度がモチーフになっているのかもしれません。

赤い鳥を聴くとプリミティブな人間の声の力や、一回性のパワーというのは本当に強いものだと痛感させられます。仮に赤い鳥が今いて、マイクなしでストリートライブをやったとしても多くの通りすがりの人を感動されるだけのパワーを持っていたと思います。考えてみれば「竹田の子守唄」とか「翼をください」みたいな曲をやるならボーカルは4、5人もいらないわけで、全員がボーカルを取れた赤い鳥のポテンシャルを最大限には引き出せなかったのかもしれません。つまり、デビューのきっかけとなった'Come and go with me'で赤い鳥はすでに完成しており、キャリアのピークだった気がするのです。アメリカのトラディショナルソングを独自の解釈を加えてアグレッシブに全員で歌う形態が一番赤い鳥が生き生きと飛んでいる瞬間で、そこから売り出そうとした大人たちの試行錯誤によって右往左往して、果ては分裂してしまったという印象です。むしろ分裂してからのハイファイセットのような音楽であれば、あとひとり女性ボーカルが加わればかなり広がりのあるボイシングもできたのにとも思います。例えばマッハッタン・トランスファーやフォー・フレッシュメンのような。


 

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