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 Aug 17,2019

■テケテケ

 テケテケとは、ベンチャーズなどが多用したエレキギターのグリッサンド奏法の擬音語で、転じてこの時代のエレキギターによるインスト音楽全般を指すこともあります。

1965年にピークを迎えた日本のエレキインストブームは凄ましかったようで、エレキギターは飛ぶように売れ、家電メーカーであるビクターやコロムビアまでエレキギターを発売するほどでした。生産が追い付かなくなり、ボーリング場のレーンの木材がネック材として使えるので、つぶれたボーリング場からただみたいな値段で買い取ったとかいう話も読んだ気がします。

これほどのブームだったので、当時の歌謡曲にも影響を与え、従来の歌謡曲にテケテケの要素を合体させたエレキ歌謡というジャンルが生まれます。例えば、橋幸夫さんが1964年にリリースしたシングル「ゼッケンNO.1スタートだ」。曲の全編に渡って入っているエレキギター低音弦による16分のフレーズはおそらくアストロノウツ「太陽の彼方に」の手法で、歌前のやや控えめなグリッサンドはベンチャーズ「パイプライン」からでしょうか。当時のアレンジャーが最先端のサウンドを取り入れた形跡がうかがえます。おそらく1964年当時のスタジオ・ギタリストはジャズ出身の方々でしょうから、ギブソンのフルアコみたいなギターでテケテケやっていたのかもしれません。加えてほとんど埋もれてしまっているベースですが、この音はエレキベースではなくまだウッドベースだと思われます(それにしても当時の歌謡曲のミックスは歌とバッキングのバランスが7対3ぐらいで、異常に歌が大きいです)。

音楽の形が楽器の流行とともに変化するのはどの時代にも当然あり、私の時代を俯瞰すれば、リンのドラムマシン、ABCの「ルック・オブ・ラブ」が流行らせたシンセドラムのシモンズ、DX7のエレピ、スネアのゲート・リバーブ、フェアライトのオーケストラ・ヒットなど一世を風靡したのちに消えていったたくさんの流行がありました。初めて聴いた時に驚く音ほど時間が経てば耳障りになり、飽きられるのも早いというわけです。

 
(写真は某所に展示してあったビクターSG12。1965年製と思われますが、新品と言ってもよいほどきれい)
 

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