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 May 8,2022

■1980年代のエピックソニー

 1980年代後半、青山ツインタワーにはワーナーパイオニアとエピックソニーがありましたが、今回は当時のエピックソニーの印象などを。

エピックといえば、いわゆるシンガーソングライターのイメージが強いメーカーで、外部作家である私にとっては縁がないと思われる場所でしたが、渡辺満里奈さんをエピックがやることになり、私に発注が来たというわけです。当時の製作部長は丸山茂雄さんで会社の奥のデスクでよくお見かけしました。

満里奈さんの仕事の時は、細かい指定などはほとんどなかったので、ジャージーなアプローチを含め、転調をバリバリに入れた曲など相当自由に書いた気がします。定型のヒットソングが欲しいならもっと大御所に発注が行くはずで、私に来たということは非定型が欲しいのだろうと突き進みました。シングルに関してはアバンギャルド傾向をやや押さえて書きましたけど、アルバム曲の中の数曲は今聴いても面白い曲が書けたような気がします。

当時、シングルは3カ月ローテーションで、その間にアルバムも作っていたのですから、年がら年中、曲を提出していましたが、こういうこともありました。ある日、スタジオに曲を持っていくと、ディレクター氏が一部を書き直して欲しいと言いました。それもレコーディングまで日にちがないのでこの場でできませんか、と。で、やってみましょうと引き受け、ディレクター氏がミキシングルームで待っている中、そのスタジオでピアノに向かい、書き直しました。セットされたマイクで「出来ましたー」と言うと、「はい、回します」とその場でデモが出来るという蕎麦屋と出前のような効率の良さ(笑)。どの曲か忘れましたが、確か満里奈さんに書いた曲です。

また、エピックはジャケットもすごく特徴があって、顔のアップと大きな英文ロゴというデザインが多く、一目でこれはエピックと分かるぐらいでした。たぶん渡辺美里さんと満里奈さんのジャケットデザイナーは同じ人だったのかもしれません。


 

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