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 Sep 12,2023

■ロゴ消しギターの謎

 エルヴィスの1950年代から60年代の映画を観ていて、以前から気になっていたことはギターのヘッドにあるロゴが消されていることでした。

どう見てもギブソンなのにヘッドのロゴが黒く塗りつぶされているのでかえって気になって見てしまうのです。例えば「G.I.ブルース」(1960年)のギブソンJ-200のロゴは塗りつぶされていますし、「G.I.ブルース」、「ブルーハワイ」(1961年)に登場するギブソンJ-45も同じく。このJ-45は近年、オークションに出品されましたが、その写真を見ると、このギターはパラマウント映画の小道具で、サウンドホール内にパラマウントの資産であることを表すスタンプが押してあります(エルヴィスの映画用を表すエルヴィスのスタンプも)。おそらくJ-200もパラマウントの所有する小道具だと思われますが、どちらのギターも撮影時の照明の反射を避けるためにつや消し塗装に加工されているようです。

つまり、映画などで登場するビールのラベルなどが架空のものに貼り替えられているのと同じく、おそらくこのギターのロゴ消しは特定のメーカーの製品を使うことに対する宣伝効果をなくし、それにまつわるトラブルを回避するためだと思われます。映画や映画会社には多数のスポンサーがからんでおり、時には不用意にそのスポンサーのライバル企業の製品を宣伝してしまうという不都合があるからです。

もう一つはエルヴィスのマネージャーであるトム・パーカーがギブソンのエンドースを許可しなかったためという説もあります。今やスーパースターのエルヴィスが「タダで」ギブソンの製品を宣伝するなどけしからんというわけです。いかにもお金が全てを支配するアメリカのショービズならではのエピソードです。


 

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