■スマイル・フォー・ミー
ビージーズのことを調べていたら、そういえば'Smile For Me'という曲があったなと思い出しました。
'Smile For
Me'は日本のグループサウンズ、タイガースが1969年にリリースした曲。作詞/作曲はビージーズのバリー・ギブとモーリス・ギブ。カバーではなく、このふたりがタイガースのために書き下ろした曲。元々、ビージーズの曲は日本人受けする要素がありますが、村井邦彦さんの曲だと言われれば信じそうな作風。
このシングルはイギリス、カナダなどでも発売されました(ただし、海外盤では日本盤B面の'Rain Falls On The
Lonely'がA面扱い。この曲はビージーズの書いた曲ではなく、クレジットはロナルド・F・ボンドとロニー・セバスチャン。海外盤のジャケットにはすでに脱退している加橋かつみさんの写真あり)。
1969年といえば、日本ではグループサウンズ人気に陰リが出始める時期。この微妙な時期に渡辺プロも本気でタイガースの海外進出を狙っていたということだったのでしょうか。ちなみにすでにアメリカでヒット曲もあったビージーズとの繋がりはおそらくレコード会社がタイガースと同じポリドールだったからだったのかもしれません。実はこの時期のビージーズはロビン・ギブが一時的に脱退するなど、ややゴタゴタしていました。いずれにしても、日本のバンドが世界的なアーティストのサポートを受け、海外でもレコードを出したのはポップミュージックの分野ではかなりめずらしかったことでしょう。
ひとつ疑問に思うのは、この曲、キーがビージーズのデモのキーで作られてしまったこと。リードボーカルの沢田研二さんのヴォイスレンジ、トップはF♯あたりですが、転調後の最後の伸ばしはG♯で1音高いのです。イギリス録音ということで伝達がうまくいかなかったか、沢田さんより高いヴォイスレンジの加橋さんをあてにしていたのか、そのあたりは不明ですが、この部分、ちょうどイギリスに滞在していた中尾ミエさんが呼び出され、歌ったのだそう。前年のヒット曲「君だけに愛を」でも終盤あたりのGが出てくる部分は沢田さんと加橋さんが入れ替わってましたが、加橋さんでもロングトーンのG♯は厳しかったと思われます。
それにしても、登場人物が全員めちゃくちゃ若い。ギブ三兄弟の長男バリー・ギブは21歳、モーリス・ギブに至ってはまだ10代。UKロックスターの証、ロールスをすでに所有(ジャケット上段右写真)。さらに、このジャケットでカートに乗っているまだ少年ぽいバリーが、後に’Night
Fever'でのビージーズ、センターのひげ面の人になるとは到底予想できず。
私の世代でビージーズといえば、まずは映画の主題歌の'Melody
Fair'。途中、7/8拍子が入り、表と裏が逆になり、なかなか正確には歌えない曲。
ちなみに1972年のビージーズ日本公演の際、沢田研二さんは彼らと再会しているそう。
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