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Apr 8, 2007 

■ストロベリー・パス

 
トロベリー・パスと聞いて、「ああ、あのバンドね」と認識できる人はかなりの日本ロック通だと思われます。

このバンドは1971年に活動していた、成毛滋氏と角田ヒロ氏(現在のつのだ☆ひろ氏)のユニットです。この前
身がボーカルに柳ジョージ氏のいた「ジブシー・アイズ」で、この後がベースに高中正義氏を迎えた「フライド・エッ
グ」です。

1970年代初期、成毛氏と角田氏は「ミュージック・ライフ」誌のプレイヤー人気投票で1位の常連でした。私の
周りの音楽好きや、自分でギターを弾く連中は誰でも両氏の名前は知っていましたが、実は、誰もそのレコード
を持っておらず、音源はほとんど聴いたことがなかったのです。そして、それらのオリジナル・レコードはレアとな
り、近年、中古市場でとんでもない値段で取引されていました。今まで何度かCD化されたと記憶していますが、
今回、一番聴きたかったストロベリー・パスの唯一のアルバム「大烏が地球にやってきた日」が再発され、入手
したのでその印象などを。

私が興味があったのは、このアルバムで「メリージェーン」が初収録されていたという点。つまり、今でも歌い継
がれるスタンダードが生まれた同時期に彼らが他にどんなことをやっていたかに興味があったのです。

結論から言いますと、角田氏作曲の「メリージェーン」はアルバムの中では異色の曲で、唯一、シングル向きに
制作されたという感じでした。他の曲は、今の基準で考えれば、手探りのような印象は否めませんが、これが
まだGSの余熱が残っていた1971年のリリースということを考えれば、恐るべき先進的なサウンドであったはず
です。クリームやツェッペリン、ジミヘン、プロコルハルムなどの影響が感じられるアプローチや、ゲストで1曲だ
け参加している柳ジョージ氏や、角田氏のボーカルは今聴いてもすごいし、角田氏のドラムが多くのバンドでひ
っぱりだこだったのも十分納得できます。そして、ゲスト・プレイヤーのベースは日本のエレキ・ベーシストの草分
け的存在、江藤勲氏。いや、ブラインドで聴いたら、イギリスの1970年代のバンドと間違える人もいるかもしれま
せん。万人向けではありませんが、GSの時代とフォークの時代の間を埋めるミッシング・リンクや、日本の黎明
期のロックに興味のある方に。

<<石森章太郎氏の書いたカラスのイラストが秀逸な「大烏が地球に
やってきた日」のジャケットです。
プロデューサーは樋口康雄氏とかキャロルとかユーミンとも関わりのあっ
た本城和治氏。
写真左は1972年7月「ミュージック・ライフ」誌に掲載されたフライド・エッ
グの広告。日本語が一切使われていない、当時としては珍しい広告で
す。

関連テキスト・・・成毛滋のギター・メソッド


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.       このテキストを書いた後に成毛滋氏が先月、3月29日に逝去されたことを知りました。
                        謹んでご冥福をお祈りいたします。
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