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■成毛滋のギター・メソッド 私がエレキギターを初めて買った1970年代初期はどんな時代だったかというと、1960年代後半のGSブーム が去り、「ニューロック」と呼ばれるジャンルが台頭してきた時代でした。 「ニューロック」でのギターの音色はいわばオーバードライブした歪んだトーンが主流で、それまでのベンチャー ズを起点とするような音色とは一線を画するモノだったのです。現在のようにビデオや教則本が溢れているわけ ではなかったので、ギターの音色をどうやって歪ませるのかさえ分からなかった時代です。クリームやレッド・ツ ェッペリンを聴いて、ギターの音色が「なんかちがう」と思いながらも、当時のギター系の雑誌にはフォークギタ ーの弾き方は載っていても、本当に知りたいロック系のことはあまり載っていませんでした。 そんな時代に目からうろこモノの情報満載だったのが「成毛滋のロックギター・メソッド」だったのです。 これはグレコギターに付属していたカセット・テープと教則本だったのですが、まさに当時のプロ・ギタリストが発 信した最先端の情報だったのですな。つまり、ギターといえば「禁じられた遊び」、または「戦争を知らない子供 たち」が主流という時代にロックギタリストをターゲットとした画期的なモノだったわけです。 エレキギターの3弦は巻弦があたりまえという時代(当時はギブソンでさえも出荷時には3弦は巻弦)に「3弦は プレーン弦を使う」という情報や、ニューロックでの歪んだトーンはファズではなく「アンプをフルドライブさせて得 る」とか、「クライベイビーをブースターとして使う」といった当時のプロ・ギタリストのみが知り得た情報がそこに は惜しげもなく披露されていたのです。 まあ、実際には3弦がプレーン弦のセット弦は東京のかなり大きな楽器店ではないと入手できなかったし、フル ドライブさせて良好なトーンの得られる真空管アンプは高くて手が出なかったのですが、それも含め、このメソッ ドの志しの高さを感じたのでした。
2002/8/20 |
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