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Aug 20, 2009 

■追悼・松林宗恵監督

 
の10日に東宝で多くの傑作映画を残された松林宗恵監督が逝去されました。松林監督は一度だけある席
でお目にかかったことがありまして、お話もさせていただき、とても印象に残っている方でした。

私のライブラリーの中には松林監督の作品も多いのですが、昨日は明け方に「世界大戦争」という作品を久々
に見ることにしました。

この映画は1961年の作品で、冷戦時代の一触即発の雰囲気を色濃く反映した内容です。キャストは東宝のス
ター勢ぞろい、宝田明さん、星由里子さん、フランキー堺さん、乙羽信子さん、白川由美さんなどで、音楽は團
伊玖磨さんという豪華な布陣です。

一番、印象的な場面は核ミサイルが日本に飛んでくる時に、この家族がどこにも逃げないで家でじっと待ってい
る場面。おそらく、この価値観というのは海外などでは理解されにくいものなのではないかなと思ったのですよ。
あるがままを受け入れるというのか、死を前にしてじたばたしないというのか、これが日本人の美意識のようなも
のかもしれません。そういえば、「ゴジラ」だったか、なんだったか失念しましたが、それにも類似したようなシー
ンがあったと記憶しています。

あとはエンディング。海外ものだとこういう展開でも最後には残った人類が新たな世界へ踏み出すという聖書み
たいな展開でほっとして終わったりするのですが、この映画のエンディングは実に重い感じです。けれど、実は
こういう死生観こそが日本人の根底に流れているものだったりするのかなと思ったりもします。

いずれにせよ、松林監督の作品はこれからも折に触れて見たくなる作品なのだろうと思います。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

 


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