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Apr 11, 2010 

■コーラスで思うこと

 
の経験から言えば、日本のスタジオコーラスはクセとかこぶしなどを極力使わずに、楽器のような正確さで
編曲者の意図とするオケと溶け込むような歌い方を要求される傾向にあると思うのですよ。

それに比べて、ビートルズなどの初期のコーラスなどはコーラスそのものがものすごく主張をしていたりします。
初期はダビングなどの録音技術が進歩してませんから、3人のうち1人がリードなら、バッキングのコーラスは自
動的に2声となるわけですが、この2声もそれぞれリードが歌えるシンガーなので、コーラスもいわゆる「歌っちゃ
てる」状態で、とても2声とは思えないほど厚みと表情があったりします。

笑っちゃうのは、ビートルズがまだビートブラザーズという名前でトニー・シェリダンのバッキングをやっていた頃の
「マイボニー」。ボーカルも、おそらくリードギターもシェリダンなのですが、そのバックで演奏とコーラスをしている
ビートルズの自己主張の強いこと強いこと。間奏に来たら、いきなりシャウトはするわ、合いの手は入れるわ、
もうやりたい放題。ポールに至っては、勝手に"I know!"なんて歌詞まで作って歌っちゃう始末。これはやはりビ
ートルズは普通のソツなく演奏するバックバンドという枠からはみ出していた証拠なのでしょうな。

で、なんでこういう話をしているかというと、Youtubeで偶然に見た「三人の侍」というユニットのコーラスがあまり
に素晴らしかったからです。「三人の侍」はチャー、奥田民生、山崎まさよしの3人による2002年に結成されたユ
ニット。ご存知の通り、この3人はそれぞれリードシンガーなので、声質も歌い方も三者三様です。けれど、この3
人がそれぞれのクセのある歌い方でハモるコーラスがすごくカッコいいです。音源はライブなのですが、2声の
コーラスでもすごく厚みがあります。なんというか、決してきれいなハモリじゃないのですが、サンプリングした
ヴォイスのようなハモじゃなくて、リードボーカルと同じようなうねりや表情があるのですな。今はピッチなども
ライブにおいてさえ瞬時に修正できる機械がありますが、より深く人の心を打つのはそういう部分じゃないんだろ
うなと思った次第です。

岸正之ホームページ kishi masayuki on the web


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