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■Warm Front制作裏話 最近、発刊された日本のシティポップスを扱ったガイド本の中で、私のビクター時代の2枚が紹介されていた ので、少々、思い出したことなどを書いてみようと思います。 デビュー・アルバムの「Warm Front」には実は今剛氏が編曲して、パラシュートが演奏したアウトテイクが1曲あ ります。この曲はリズムと仮歌の段階で制作が中断されて、結局そのままおクラ入りとなりましたが、おそらくビ クターのどこかにはそのマスターテープが眠っているはずです。 「City Tripper」はカラオケの録音が全て終了した段階で、もう一度リズムだけを残してダビング部分を全部録り 直しました。井上鑑氏が当時、最新鋭だったイミュレーターをスタジオに持ち込んで、手弾きでサンプリングされ たドラム音やベース音をユニゾンで新たに加えていったのをよく覚えています。 私がギターを弾いたのは2曲で「カリフォルニア・ブルー」のリード部分と後半のオブリガード、「Ordinary Girl」の アコギです。 「カリフォルニア・ブルー」のオブリガードは当時、ビクターのレコーディング・エンジニアをされていた元スペクトラ ムのトロンボーン奏者、吉田俊之氏と一緒にフレーズを作り、譜面を書いて弾いたと記憶しています。エンジニ アの山口州治氏がスタジオのアウトボードなどを駆使してなんとかラインで良い音を作ろうとしていました。また、 このリズム録りの時、スネアのチューニングがなんか高いような気がして、トークバックでスネアのチューニング、 低くできますかなんて言ったことを思い出しました。その時のドラムは山木秀夫さん。なんて身の程知らずなオレ (笑)。4リズムの際のギターは矢島賢さんだったような気がします。 「Ordinary〜」のオケはドンカマ(リズムのクリック)なしにアコギの私と、ピアノの奥慶一氏が2人でビクターの 一番広いスタジオで同時に録音しました。 「See You Again」で今氏は本物のレズリースピーカーを使ってフェイズしたギターサウンドを得ています。また 「真夜中のWhisper」で今氏はスティールギターを使用しました。ダビングは確かサウンドシティ・スタジオでした。 「See You Again」のベースは美久月千晴氏のピック弾きによるものです。この曲のリズム録りのときに仮歌を 聴いたドラムの林立夫氏が「この曲、いいね」と言ってくれたのがとても嬉しかったです。この曲の詞は最終的 に小林和子氏になったのですが、小林氏に発注する前にディレクターサイドから某有名作詞家に詞を発注して いて、その別タイプの詞もありました。 「ガールフレンド」はこのアルバム中、唯一生ストリングスが入っている曲ですが、シンセのようなサウンドにし てしまおうと大量のエフェクト(確かマエストロのフェイズシフター)をかけました。今、考えるともったいない話で す(笑)。また、この曲でギターを弾いたのは杉本喜代志氏だったと思います。 当時はミックスダウンの際にコンピュータによるオートメーションシステムなどはなかったので、複雑なことをや ろうとすると多くの人手が必要でした。当然、私もかりだされました。例えば、「Say Goodbye」を注意深く聴くと、 スネア一発だけに深いエコーがかかっていたりするのですが、これは私がその部分でスネアチャンネルのエフ ェクトノブをぐぐっと回していたのです。
2002/9/19 |
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