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 Feb 13,2025

■松林監督の本

 東宝で多くの作品を残された松林宗恵監督の本を入手しました(偶然にも署名本)。

松林氏には一度だけお目にかかったことがあり、その時に「世界大戦争」は大好きな映画ですとお伝えしました(その席には財津一郎さんもいらっしゃいました)。

東宝の特撮ものの中でも「世界大戦争」が異色なのは、これ、超バッドエンドなのですよ。同時期の東宝の「妖星ゴラス」もパニックムービーですが、これは人類が英知を結集して最終的に危機を乗り切るというプロットです。ところが、「世界大戦争」はその人間同士が争い、最終的には行きつくところまで行ってしまうという容赦ない物語です。

つまり、「妖星ゴラス」が人間の聖性を強調した作りであるのに対して、「世界大戦争」は人間の俗性に焦点が当てられている点に私は惹かれたのです。キャストも一風変わっていて、この手の映画に笠智衆さんや乙羽信子さんというのはかなりめずらしいと思います。

本は、松林さんが1960年代から1980年代にかけて様々な新聞や雑誌などに書いた文章をまとめたもの。氏はお寺の生まれで、仏教の大学、龍谷大学を卒業した後、映画の世界へ進むために日大の芸術学部へ入り(署名の江古田というのは日大のあった場所と思われます)、その後、海軍士官となり、戦後、東宝へ戻ったという異色の経歴をお持ちです。氏は仏教に深く帰依しており、その思想が映画にも現れていると思われます。また、東宝の特撮ものに笠さんという大変めずらしいキャスティングも笠さんの生家がお寺ということと無関係ではないと思います。


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